2.the apple of Sodom

『2.the apple of Sodom　①ソドムのリンゴ。美しいが手にすると煙が出て灰になるという　②失望の種』


『姫様』
『なぁに？』
『その…』
姫様はドレスの裾をしばり、二つ重なった椅子の上でバランスをとり立っている。
『その………あの…』
『なによ？何か言いたいなら早くして。この体制結構キツいの。』
『非常に申し上げにくいのですが……その…下着が見えております』
『っ…！？』
慌ててスカートの裾で隠そうとした姫様はバランスを崩して椅子から落ちる。
不思議なもので、事故というのは一瞬のことなのに、事故がおきている場面は、しっかりと目につくものだ。
落ちてきた姫様は尻餅をついたのか、お尻をおさえる。
『…御怪我はありませんか？』
『…精神的負傷ならあるわ…嫁にいけない！』
『また……大丈夫ですよ』
…大丈夫。あなたは私が護るから。
『さあ、立ってください。ドレス、着替えた方がいいですよ。』
さしだした手をはらう姫様。
『立ち上がる時にまた見えるかもだからうしろむいてて！！』
『…はい。』
姫様に背を向けて両手で顔を覆う。
小さな暗闇の中、姫様と遊んだ過去を思い出した。


『いいわよ』
『はい。』
振り替えると見慣れた顔が接近している
『姫様？なにを…』
唇に柔らかいものが触れる。
『あ…』
『我が一族には心に決めた人に口付けをするのよ。……たとえ…』
『たとえ…叶わぬ、お姫様と下僕の恋でも？』
『…そうよ。』
顔をうずめるようにして姫様は胸に顔を押しつける。

『二か月後、隣国の王子と式を挙げるわ』
『………。そうですか。』
『できるものなら、貴方と共に式を挙げたかった。』
『姫様…決して手に入らない恋でも………』
大丈夫。想うことはできるから。