3.猫

「コバン」
猫の名前で呼ばれると
少し寂しくなるのは
俺の勘違いだろうか。

「・・・真夜子」
愛する人の名前を呼んだ
返事はない。
当たり前だ。学校に行ってるんだから。
独りになると
とてつもない不安に襲われる
真夜子が学校に行っている時間だとか
時々涙がこぼれそうになる。

「どうした千両。てめぇもヒマジンだな」
「仕方ないじゃん。真夜子は学校なんだから」
笑いながら椅子に座る
寂しさを紛らわせる為によく弁天先輩のところにくるようになったのは
いつからだろう。
「ハァー」
「何お前。人んトコきてからいきなり溜息?暗ーっ」
「ハハ」
「・・・らしくねぇな。」
「気のせいだよ」
頬杖をついた弁天先輩がいきなりひらめくように言った

「銭湯いかねぇ?」

平日の昼間の銭湯には客がいなかった
「ヒャッホウ!貸切!」
女かと見間違える程美しい弁天先輩は意外とタオルで隠したりするほど女々しくないから
いつもちょっとドキドキしたりする。
きっと弁天先輩が女だったら惚れてるなー。

「っとらしくねぇな?」
「そうかな?」
「俺様の右カウンター入れようか?」
「ははっやめてよ」

「何か、あったか?」
声のトーンが落ちて
顔を寄せられる
不覚にもドキドキしてしまった。
黙って眼を閉じた
「・・・」
喋ろうとして眼をあけると
弁天先輩は何も言わずに肩を寄せていて
静かに涙を流していた
喋る言葉を忘れた。
「どどどっ・・・どうしたの?」
「浄阿美はさ・・・俺達のこと覚えてねぇンだよ」
悪鬼浄阿美・・・九浄のことだ。
「俺はずっと忘れてなかったのによ・・・」
「弁天先輩・・・」


「真夜子!迎えに来たぜ!」
猫の姿で学校にいくと真夜子は姫と九浄と志萬と一緒だった
「コバン・・・」
「ヘヘッ」

真夜子
心配するな
俺は死んでもお前を忘れないから。
死んでも　愛するから。
お前が死んだら俺も死ぬ
俺が死んでもお前は死ぬな。
俺はお前の　猫だから。